【図解】WB工法の仕組みとは?WB工法はなぜ暑く・寒くならないのかその仕組みと特徴の「ふたつの呼吸(ダブルブレス)」の秘密を大解剖

New

「WB工法で建てた家は、夏涼しくて冬暖かいって本当?」

「機械の換気システムを使わずに、どうやって空気や温度をコントロールしているの?」


快適な住まいづくりをリサーチする中で、「WB工法(通気断熱WB工法)」という言葉に出会い、その独自の仕組みに興味を持たれた方も多いのではないでしょうか。


一般的な高気密・高断熱住宅が「魔法瓶」のように家を密閉して機械で空気を入れ替えるのに対し、WB工法は「家そのものが人と同じように呼吸し、衣替えをする」という全く異なるアプローチをとっています。電力を一切使わず、自然界の物理法則と熱力学を応用することで、四季のある日本の気候に最適な環境を自動で作り出す画期的な技術です。


この記事では、WB工法が「なぜ暑く・寒くならないのか」、その核心である「ダブルブレス(ふたつの呼吸)」のメカニズムを大解剖します。


特許技術でもある「形状記憶合金」を用いた通気制御から、湿気を自然に逃がす「透湿」の原理まで、複雑な仕組みをわかりやすく解説。読み終える頃には、WB工法が単なる「換気システム」ではなく、科学的根拠に基づいた緻密な「環境制御システム」であることがはっきりと理解できるはずです。


【目次】

-なぜWB工法は「暑く・寒くならない」のか?

-根幹技術「ふたつの呼吸(ダブルブレス)」の全貌

-【仕組み1】室内の呼吸:湿気と化学物質を逃がす透湿メカニズム

-【仕組み2】壁内の呼吸:形状記憶合金が操る通気制御システム

-一般的な24時間機械換気システムとの仕組みの違い(対比)

-まとめ



■なぜWB工法は「暑く・寒くならない」のか?

WB工法について調べている方のなかには、「壁の中に空気を通すのに、夏は暑くならないの?」「通気する家なら、冬は外の冷気が入って寒いのでは?」と疑問を感じる方も多いでしょう。


結論からいえば、WB工法は一年中同じ状態で空気を通し続ける工法ではありません。外気温の変化に合わせて壁内の通気状態を切り替え、夏は熱と湿気を逃がし、冬は空気を動かさず保温する仕組みを採用しています。この季節に応じた変化が、WB工法が「家の衣替え」と表現される理由です。


—国の高気密化施策への疑問から生まれた「自然に寄り添う」設計思想

一般的な高気密・高断熱住宅は、室内と屋外をできる限り遮断し、エアコンや24時間換気などの機械設備によって温度と空気を管理します。住宅を魔法瓶のように包み、つくった快適な空気を逃がさないという考え方です。


一方、WB工法は、湿気や生活臭、建材などから発生する化学物質を室内に閉じ込めないことを重視しています。温度差や気圧差、水蒸気分圧差といった自然界の力を活用し、不要な熱や湿気を家の外へ排出する設計です。


単に住宅の気密性を高めるのではなく、日本の四季に合わせて家全体が環境へ適応することを目指している点が、一般的な住宅工法との大きな違いです。


—魔法瓶のように密閉するのではなく「衣替え」をする家

夏は、気温の上昇に反応して壁内の通気口が開きます。日射で温められた壁内の空気が上昇することで気流が生まれ、外壁から伝わる熱や、室内から壁を透過した湿気を小屋裏側へ運び、屋外へ排出します。


室温をエアコンだけで強引に下げるのではなく、暑さの原因となる熱と湿気が室内へこもりにくい状態をつくるのです。


冬は反対に、外気温が下がると通気口が閉じ、壁内の空気の流れが止まります。動かない空気は熱を伝えにくいため、壁の中に形成された静止空気層が、家全体を包む保温層として働きます。


つまりWB工法は、「通気するから涼しい」「断熱するから暖かい」という一つの性能だけで快適性を生み出す工法ではありません。夏は通気、冬は保温へと住宅の状態を自動的に切り替えることで、暑さと寒さの両方に対応します。


この仕組みの中心にあるのが、次に解説する「室内の呼吸」と「壁内の呼吸」からなる、WB工法独自のダブルブレスです。


■根幹技術「ふたつの呼吸(ダブルブレス)」の全貌


WB工法の仕組みを理解するうえで、最も重要なキーワードが「ダブルブレス」です。ダブルブレスとは、直訳すると「ふたつの呼吸」を意味し、WB工法では「室内の呼吸」と「壁内の呼吸」という2つの働きを組み合わせて、家の空気・湿気・熱を調整します。


一般的な住宅では、窓や換気口、24時間換気設備など、限られた場所から空気を入れ替えるのが基本です。一方、WB工法では、透湿性を持つ内装材と壁内の通気層を連動させ、家全体が呼吸するように湿気や不要な物質を屋外へ逃がします。


ただし、壁の中へ常に大量の外気を流しているわけではありません。夏と冬で通気状態を切り替えながら、その季節に適した住環境をつくる点が、WB工法の大きな特徴です。


—「室内の呼吸」と「壁内の呼吸」が連動する

ひとつ目の「室内の呼吸」は、室内で発生した生活湿気や生活臭、ホルムアルデヒドなどの化学物質を、透湿性のあるコットンクロスや塗り壁を通して壁側へ逃がす働きです。


湿気は、水蒸気分圧の高い場所から低い場所へ移動する性質を持っています。WB工法では、この自然な移動を利用して、室内にたまった湿気や湿気に含まれる臭気成分などを壁の内側へ透過させます。


ふたつ目の「壁内の呼吸」は、壁側へ移動してきた湿気や熱を、壁内の通気層を通して屋外へ排出する働きです。夏は壁内に上昇気流を生み出して熱と湿気を外へ逃がし、冬は通気を抑えて静止空気による保温層をつくります。


この2つが連動することで、室内から壁内、そして屋外へと続く空気と湿気の流れが生まれます。


— 電力に頼らず自然エネルギーを活用する仕組み

WB工法の壁内通気を支えているのは、温度差、気圧差、水蒸気分圧差などの自然エネルギーです。


壁内に設置された通気口には、温度変化によって伸び縮みする形状記憶合金が使われています。気温が高くなると通気口が開き、低くなると閉じるため、電動モーターや人の操作に頼らず、季節に合わせて通気と保温を切り替えられます。


つまり、WB工法のダブルブレスは、単に「風通しの良い家」をつくる仕組みではありません。室内の湿気を壁へ逃がす透湿作用と、壁内の空気を季節に応じて制御する通気システムを組み合わせた、住宅全体の環境調整システムです。


■【仕組み1】室内の呼吸:湿気と化学物質を逃がす透湿メカニズム

WB工法における「室内の呼吸」とは、室内で発生した湿気や生活臭、化学物質を、壁面を通して壁の内側へ逃がす仕組みです。


一般的な住宅では、室内側に防湿シートを施工し、湿気が壁内へ入り込まないように遮断します。室内にたまった湿気や臭いは、換気口や24時間換気設備から排出するのが基本です。


一方、WB工法は、湿気を完全に遮断するのではなく、透湿性のある内装材を通して適切に移動させ、壁内の通気層から屋外へ排出するという考え方を採用しています。


— 土壁の原理を応用した「水蒸気分圧差」による自浄作用

WB工法の室内側には、コットンクロスや塗り壁など、湿気を通しやすい専用の内装材が使われます。


人の呼吸や発汗、料理、入浴、洗濯物の部屋干しなどにより、住宅の中では毎日多くの水蒸気が発生しています。室内の水蒸気が多くなり、壁内部との間に差が生じると、水蒸気は濃度の高い場所から低い場所へ自然に移動します。


この現象は、水蒸気分圧差による拡散として説明されます。WB工法は、電動ファンで湿気を強制的に吸い出すだけではなく、こうした自然な移動を利用して、室内の余分な湿気を壁側へ逃がします。


この仕組みは、日本の伝統的な土壁が持つ調湿作用を、現代の住宅へ応用したものです。


湿気が室内にたまりにくくなることで、梅雨や夏場のジメジメ感を抑えやすくなり、結露やカビ、ダニが発生しにくい住環境づくりにもつながります。


— ホルムアルデヒドなどのVOCも壁から排出する

WB工法で壁を透過するとされるのは、湿気だけではありません。


建材や家具などから発生するホルムアルデヒドをはじめとした揮発性有機化合物、いわゆるVOCや、湿気と結びついた生活臭も、透湿性のある壁面を通して壁側へ移動するとされています。


資料で紹介されている実験では、8畳のWB工法の部屋をホルムアルデヒド濃度1ppmの状態にしたところ、5時間以内に濃度が半分以下となり、48時間後には0.073ppmまで低下しました。また、放散量全体の54%にあたる成分が、壁を透過して排出されたと報告されています。


ただし、室内の呼吸だけで排出が完了するわけではありません。内装材を通過した湿気や化学物質を住宅の外まで運ぶには、壁内部に空気の流れが必要です。


次の見出しでは、形状記憶合金と通気層を使い、壁側へ移動した熱や湿気を屋外へ排出する「壁内の呼吸」の仕組みを解説します。


■【仕組み2】壁内の呼吸:形状記憶合金が操る通気制御システム

WB工法の「室内の呼吸」によって壁の内側へ移動した湿気や生活臭、化学物質は、そのまま壁内にとどまるわけではありません。これらを住宅の外へ排出し、季節に応じて熱の流れを調整するのが、もうひとつの呼吸である「壁内の呼吸」です。


WB工法では、外壁と内壁の間に通気層を設け、基礎部分や小屋裏、軒天などに専用の通気口を配置します。通気口の内部には、周囲の温度に応じて形状が変化する形状記憶合金が組み込まれており、気温の変化に合わせて通気口を自動的に開閉します。


電気を使うモーターや人による操作に頼らず、自然の温度変化によって夏と冬の状態を切り替えられることが、WB工法の特徴です。


—【夏の仕組み】煙突効果で熱と湿気を排出する

夏になって気温が上昇すると、形状記憶合金が反応し、壁内の通気口が開きます。


強い日射によって外壁が温められると、壁内にある空気の温度も上昇します。暖められた空気は軽くなって上へ移動するため、壁の中に自然な上昇気流が発生します。これが、煙突の内部で暖かい空気が上昇する現象と同じ「煙突効果」です。


上昇気流が生まれることで、床下側から入った比較的温度の低い空気が壁内を通り、外壁から伝わる熱を小屋裏側へ運びます。同時に、室内の呼吸によって壁側へ移動した湿気や生活臭なども気流に乗り、屋外へ排出されます。


熱が室内へ届いてからエアコンで冷やすのではなく、壁の中を通過する段階で屋外へ逃がすことが、WB工法における夏の排熱の考え方です。


—【冬の仕組み】静止空気が家を包む保温層になる

外気温が下がる冬には、形状記憶合金が元の状態へ戻り、通気口が閉じます。


通気口が閉じると、夏に発生していた壁内の空気の流れが抑えられます。動かない空気は熱を伝えにくいため、壁の中に形成された静止空気層が、住宅全体を包む保温層として働きます。


つまり、夏には熱と湿気を逃がすための通気層だった空間が、冬には室内の暖かさを守る断熱層へと変化するのです。


WB工法の壁内の呼吸は、単純に家の中へ風を通す仕組みではありません。気温に応じて「空気を動かす状態」と「空気を止める状態」を切り替え、夏の排熱と冬の保温を両立させる通気制御システムです。


■一般的な24時間機械換気システムとの仕組みの違い(対比)

WB工法と一般的な24時間機械換気システムは、どちらも室内の空気環境を整えることを目的としています。しかし、空気や湿気をどのように動かすのか、その設計思想には大きな違いがあります。


一般的な高気密・高断熱住宅では、室内をできる限り密閉し、給気口や換気扇、ダクトなどを通して空気を計画的に入れ替えます。電動ファンによって室内の汚れた空気を排出し、屋外から新しい空気を取り込む仕組みです。


一方、WB工法では、透湿性のある壁面と壁内の通気層を利用し、湿気や生活臭、化学物質を家の外へ逃がします。壁内通気の制御には、温度変化に反応する形状記憶合金が使われており、夏は通気口を開き、冬は閉じる仕組みです。


つまり、一般的な機械換気が「決められた給排気口から空気を動かす」のに対し、WB工法は「壁面を通して湿気を逃がし、壁内の気流で屋外へ排出する」という考え方を採用しています。


— 湿気を「遮断する家」と「透過させる家」

一般的な高気密住宅では、室内側に防湿シートを施工し、生活湿気が壁の中へ入り込まないようにします。湿気の侵入を遮断し、室内にたまった水蒸気を換気設備から排出する考え方です。


これに対し、WB工法では湿気を壁面から透過させ、壁内の通気層を通して外へ逃がします。湿気を壁へ入れないようにするのではなく、入った湿気がとどまらない経路をつくる点に特徴があります。


どちらも壁内結露を防ぐことを目的としていますが、その方法は「遮断」と「透過・排出」で異なります。


—ダクトを使わないことによる維持管理の違い

一般的な第一種換気システムなどでは、フィルターの清掃や交換、電気代、機器本体の点検や将来的な交換が必要になります。ダクトを使用する設備では、内部にほこりや汚れがたまらないよう、適切に管理することも大切です。


WB工法の壁内通気は、形状記憶合金と自然な空気の流れを利用するため、電動モーターで通気口を開閉する必要がありません。また、大規模な換気ダクトに依存せず、壁内の通気層を利用することから、設備交換やフィルター管理にかかる負担を抑えやすいとされています。


ただし、WB工法であれば住宅設備の点検が一切不要になるわけではありません。実際の換気計画や採用設備、メンテナンス内容は住宅ごとに異なるため、施工を依頼する工務店へ事前に確認することが重要です。


WB工法と機械換気には、それぞれ異なる考え方と特徴があります。大切なのは、単純にどちらが優れているかではなく、空気環境、維持管理、暮らし方に対する自分たちの希望に合っているかを比較することです。


■まとめ

WB工法の仕組みは、単に壁の中へ空気を通すだけの換気方法ではありません。室内で発生した湿気や生活臭、化学物質を壁面から逃がす「室内の呼吸」と、季節に応じて壁内の空気の流れを切り替える「壁内の呼吸」を組み合わせた、ダブルブレスという住宅環境の調整システムです。


室内の呼吸では、コットンクロスや塗り壁などの透湿性を持つ内装材を通じて、余分な湿気や湿気に含まれる成分を壁側へ移動させます。その動力となるのは電動ファンではなく、湿気が多い場所から少ない場所へ移動する水蒸気分圧差です。


壁側へ移動した湿気や熱は、壁内の呼吸によって屋外へ排出されます。夏は形状記憶合金が気温の上昇に反応して通気口を開き、壁内に生じる上昇気流によって、日射熱や余分な湿気を小屋裏側から外へ逃がします。


冬は気温の低下に合わせて通気口が閉じ、壁内の空気の流れが抑えられます。動かない空気が保温層として働くことで、室内の暖かさを守りやすくします。この季節による切り替えが、WB工法が「衣替えをする家」と表現される理由です。


一般的な高気密・高断熱住宅が、室内をできる限り密閉し、24時間換気設備で空気を管理するのに対し、WB工法は湿気を壁面から透過させ、自然な気流で屋外へ排出する考え方を採用しています。


ただし、WB工法であればエアコンや換気設備が一切不要になるわけではありません。快適性は、地域の気候、断熱材、窓の性能、間取り、施工精度、住む人の暮らし方によっても変わります。


また、WB工法の性能を十分に引き出すには、通気経路や専用部材を正しく施工できる技術力が欠かせません。依頼先を選ぶ際は、WB工法の施工実績、断熱仕様、換気計画、アフターフォローの内容まで確認することが重要です。


機械の力だけで温度を管理するのではなく、温度差や水蒸気分圧差、空気の浮力といった自然界の物理法則を利用すること。それが、WB工法の仕組みを理解するうえで最も重要なポイントです。